november in the U.K.

十月の終わり、ロンドン行きの航空券を取ってしまった、全然、お金に余裕がないのに…だからチャイナの格安便で、乗り継ぎ時間が一日近くあった。

空港で夜を明かさないといけなくて、私は旅や山が好きだというのに不快な場所では眠りにつくことを拒否するような、旅に不向きの身体を持ち合わせていて、そんなことも分かっているので画材道具を持ってきた、時間潰しに。空港の、お尻が痛くなるプラスチックの椅子にスカーフを敷き、夜中まで絵を描いていたときにふと、とめどなく、過去の十一月のことが記憶から引き出された。思い返せば私の十一月はいつも、散々だった。胃痛が治らず内科に行ったら鬱だと診断された日も、仕事が決まらず精神的に限界を迎えていた日々も、ベッドの上で屍のようになっていた日も、自分が一生懸命にやってきたことが全部間違えた選択だったのではないかと苦しめられた日も、思い返せば全部、十一月だった。十一月の空はいつも、一年で一番綺麗だったから、見上げるたびにぼんやりと、あぁまた十一月だと、思った。憎たらしいほどに空が綺麗で、だから十一月が嫌いになれなかった。

十一月は悲しいことが多かった、それを変えたかったんだと思うと、深夜の空港でノートに書き殴っていた。だからこの旅のことは、”november in the U.K.”とシンプルなまま、まとめることにした。

ロンドンはちょうど、秋が深まる頃で、街が鮮やかに染まっていた。私はただ、その秋と、人を、追いかけ過ごした。

なぜか間違えて、小さな街に降りてしまった。歩いていると、道の向かいにある教会にとても惹かれた。教会の鐘の音に誘われると、ちょうど日曜のミサの時刻だった。