居心地の良いリビングに居てないでエレバンの街に繰り出さないとと思い出かけた日、初めて見るアルメニア正教の教会には、目を疑った。


全く違う、ジョージアと。キリスト教でありながらまるで砂漠の中にある遺跡かなんかのような明瞭な佇まい、内部には赤い絨毯が敷かれ、宗教画が数枚掛けられているが簡素な空間。しかもジョージアが厳かな色合いのイコン、ロシアが慈悲を促す繊細なキリスト・マリアの絵画に対してアルメニアはインドすら彷彿させる鮮やかなキリスト画が見かけられ、ここはもうアジアだと確かに感じることのできる、そんな文化だった。


胡座をかき、右手に葡萄を、左手にワイングラスを持つお釈迦さまにしか見えない……….


(L)アルメニアの建物の多くを占めるのはトゥファという赤みがかった暖色系の石、(R)経年するとこんな風に真っ黒で、重たい印象の境内。この色の違いで、その教会群の新旧がなんとなく見て取れる。


鮮やかな宗教画。背景にはアルメニアの人々の心のシンボルアララト山とアルガツ山が描かれている。





宗教画もなく、十字が光って浮かび上がる筒状の空間。これも、キリスト教なんだ。均一な筒状の中にいると、ハウルの荒地の魔女が王宮を訪れた時のような、あのチラチラとした怖さがある。



教会や街、お墓など、あらゆるところで見かけるハチュカルという石碑。


エレバン郊外にあるエチミアジン大聖堂は、世界最古の大聖堂とされるアルメニア正教の総本山。301~3年に啓蒙者グレゴリウスによって始めの建立がなされたそう。あまりにも古すぎる。修復増築を繰り返しているそうなので、古さはあまり感じないけれど。楽しみにしていたのに訪れた際も修復中で、中を見学することができなかったのはとても残念。けれど、教会の入り口の修復作業を私は炎炎天下のなか、一体いつまで見守っていたんだろう。もう、圧巻だった。どこにも見たことないような、あらゆるところで見たような、文化の混じりよう。なんて不思議で、可愛らしい天井なんだろう、と。真っ黒な衣を纏う司祭さんも見かけた。まるで映画の世界。


週末だったこともあり、どこの教会も家族連れや結婚式で正装した人々で賑わっていた。ジョージアで見た結婚式は厳かで、固唾を飲んで見守った。それに比較するとアルメニア、女性たちは鮮やかなドレスを纏い濃い口紅をひいて教会の境内へ。は随分と豪奢で自由な印象を持った。ジョージアほど宗教に対する規律は厳しくないようだ。


そんな結婚式で賑わう教会の庭では、ゆったりとした時が流れる、八月のアルメニア。


陸続き、それでもここでは蜜蝋の色は鮮やかな黄色になり、あのお香の香りも、しない。そのことを寂しく思った。


帰宅し、ヒンドゥーの宗教画を調べ絵みると、そっくり!なんて面白いんだろ…

そんなアルメニア正教の現代。あくまでエレバン、またはその郊外の姿。その後地方へ行き、古代の教会群を訪れることができたのでまたそれは別の記事に。