Tribal Tattoo(Batok)について

ここではタトゥーのこと。ひとつは、カリンガ地方のトライバルタトゥー(バトック)の文化についてもうひとつは、個人的なタトゥー観について。

トライバルタトゥー(バトック)について

実は私は、土着文化の人々の受け継ぐ幾多的な太い紋様、色使いにはどこか怖い印象を抱いていたし今も、持っている。だからトライバルタトゥーにも若干抵抗があって、アポワンさんのThree dots以外に入れる必要があるか迷っていた。でも、実際に村でそのシンボルを見てみると全て、この地らしい種の境界性が曖昧な生活に根付いたモチーフだった。

なんかそのことが腑に落ち、別のタトゥーアーティストの方に雨のマークを入れて貰った。

惹かれた理由は、私の名前に水を持つこと、水に惹かれること、水を地球に循環させる”雨”と一緒に生きることは自分に合っている気がしたからだ。

1000年以上続くタトゥー、道具も全て自然のものだと教えてくれた。模様を入れるのも植物の繊維、炭と水を溶かしたインク、柄の部分がバンブー、刺す部分は柑橘の木カラマンシーの棘で出来ている道具。

従来バトックは、男性には勇士としての証(首狩を納め、成人として認められた者)、女性は美(やはり成人として、完全な美しい存在)としての証だったらしい。その後のスペイン統治下後、アメリカの宣教師により首狩りの禁止から、バトックは女性が主なものになったそう。確かに村でも長寿に見える女性たちの肌にはスネークスキンの紋様が刻まれ、その肌は、物語性を感じさせ美しく、また彼女たちの雰囲気は浮世離れしているようにも思えた。

アメリカ人宣教師の教えで、学校では若い少女だたちにトライバルタトゥー(バトック)は隠すようにと強制され、次第にバトック文化は下火になっていったよう。

数年前までもし彼女が亡くなってしまえばカリンガのトライバルタトゥー(バトック)は、滅びてしまうものだった。

彼女は107歳、16歳の頃からバロックを、人生の節目を迎える者の肌に、刻んできた。当たり前だが、神聖なものなのだ。

自身の名前がプリントされたシャツを羽織り赤に負けない大振りのリングやピアス、早朝から淡々とこなす背中に一体、どんな人生だったんだろうと思う。

そして私自身、新しい価値観との出会い、その度に幾度も内省し気づいてゆくこの旅は大きな節目となったんだと思う。

観光化されていることも、理解している。変容し続けるものが文化の継承か、分からない。でも、悪路の帰り道に、ジプニーの荷台に揺られながらタトゥーを刻んだ旅人たちは晴れ晴れしていた、きっと私も。すごく愛おしい時間だった。

そして個人的なタトゥー観について

そもそもタトゥーは日本だとまだ受け入れ難いのかな。

正直、ヤクザのするものと言われてもヤクザもピンときてない私からしてみるとタトゥーは私のお守りだ。

それに、誰に何を言われようと自分の身体をマネジメントするのは結局、自分。この身体の創造主である両親以外に何か言われたならそれは価値観の違い、自身の身を置く環境のチューナーくらいに思う。が、今回トライバルタトゥー(バトック)を入れたことで比較的なんでも容認する母に真っ向から反対された。(入れちゃったんだけれど)

母以外の全ての人の反応は好印象で、今までもらったことのないような素敵な言葉をかけてもらった。更にそれを入れる背景や紋様の理由に興味を持ち、聞いてくれたことが尚、嬉しかった。だから少し、悲しかった。と、同時にわかり合いたいなと思ったから、自分の持つタトゥー観について書いておきたいなと思った。

私は自分の身体を扱うのが本当に下手で、精神と乖離することが多くその度に身体を恨んでいた。可愛い人を見つけるのが才能並みに得意だし、羨ましくて、色々な制約を作り身体を酷使してきたけれど自分の身体には全然向いてなかった。その仕方なさも含め自分の身体を大切にする責任、愛してあげるための選択がタトゥーだった。

生まれてくる環境も、体も性格も選べないけれど、タトゥーはその人それぞれのアイデンティティ。自分の身体が滅びるまで一緒に過ごす、自身のシンボルだ。自分の身体を愛してあげる、そんな当たり前なことが自分には本当に難しかったから。

ちなみに、一緒に過ごしたティーチャーとタトゥーについても話を聞いたことも。ある先生は、母が亡くなった後に母の名前を入れたと腰に入った虹色の蝶を見せてくれたり、別のティーチャーも両腕に大きく入った娘さん息子さんの名前を見せてくれた瞬間のあの柔らかな気持ち、純粋に、感動した。それが、私の答えだ。

ブスカランでのタトゥー広場では、アポワンさんの後ろには並んで見守り、テキパキと動くガイドの女性たち。その場を作る女性たちの日々、肌にはそれぞれのタトゥーが、生活に馴染み、かっこ良かった。

そのことも、伝えたい。

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