Iloilo3  Tuesday is the market day.

その風土からなるものを知ることの楽しみに、味わうことがある。レッスンで、現地の料理やこの土地に自生するトロピカルフルーツのあれこれを質問し興味津々な私に、「木曜日はマーケットデーだよ!」と先生たちが教えてくれる。授業の開始は朝の9時、いつも通り日の出前に目を覚まして7時前、学校から歩いて10分ほどのところでやっている朝市に行ってみることにした。学校の前のサリサリ(何でも屋さん)も朝食の時間。

日差しは既にジリジリと痛い、でも朝はいつもどこか爽やかで、身体が軽かったことを記憶している。道端の塀には溢るるような白いブーケンビリア、まだ朝露に濡れた青さは朝の静けさに似合う。この日差しの下、よくこんなにも柔らかでいられるなぁと感心する。

人が一人しか通れないほどの屋根付きの屋台通り、いつもは通るのを憚られ、ただ入り口で揚げたスナックを売っているの屋台の前をそそっと通り過ぎるだけだったのだけれど、この朝はひとり、その屋台通りに足を踏み入れて薄暗い細道をずんずんと進む。屋根付き屋台の小さな店も、こんな早朝から朝食屋として開店している。朝からそろったそのショーケースに置かれる食事を、黙々と支度する店のおじさんに「写真を撮らせてくれる?」と、尋ねた。

写真を撮っていると薄暗い屋台のプラスチック椅子に座って朝食にしているフィリピーナのお兄ちゃんに唐突に”Will you merry me?” と言われた。はぁ、面白い人ねって、朝から笑わされた。そんなおおっぴろげなジョークと人懐こい笑顔、朝から陽気な熱帯の朝に、私自身の風土にはない緩やかさを学んだ。写真のお礼を言い、屋根の先に出ると、その光景に驚いた…突然の光がまだ眩しくて、燦々とした光の下、沢山の魚、まだ羽をばたつかせる鶏、山盛りに広げられた沢山の野菜や果物、手作りのおやつ、がやがやと行き交う人の声、なんて活気だろう…完璧に、私以外地元の人しかいない朝のマーケットで、すかさずカメラを構えると、「魚じゃなくて俺を撮れよ」って叫ばれた。笑

皆の大きなひそひそ声が聞こえる。笑 コリアン?ジャパニーズ?ベトナミーズ?(それは初めてだなぁ) ジャパニーズだよと答えると、にっこり笑ってジャパニーズなのね〜!!て、みんなの顔が一斉にこっちに向かって少し、恥ずかしかった。

出来立てのプトブンボを手作りしている屋台で、写真を撮らせてもらう。「一体何枚撮っているのよ〜」って笑われたあの朝の光、パラソルから差し込こむ朝の光でブラウンシュガーが光っていたこと。

プトブンボはバナナリーフに米粉、ココナッツダイス、ブラウンシュガーを包んで蒸したフィリピンの伝統的なおやつ。ほんのりとしたでんぷんの甘さとココナッツのシャキシャキとした食感、バナナリーフの清涼さが合わさると絶品。地元のおばあちゃんに紛れて、私も出来立て熱々のプトブンボを購入した。

お母さんやおばさんたち、家のキッチンを担うものたちが群がっているところをのぞいてみると、大きなグリーンジャックフルーツをフルーツを見たことのない湾曲したナイフでカットし、袋に詰めている。スープや煮込み料理によく使われる熱帯の定番野菜。

旅することの楽しみは、こうした土地のにおい、湿度、光に包まれながら、その土地のものを味わうこと。その土地の生活の中にある光。写真とともに当時の記憶をなぞってみれば、力強く感じたあの熱帯の地で、私自身の中にあった光への欲動を思い出したりしている。